2026年7月24日
ポイント
●マナマコのパイオニア微生物の探査からプロバイオティクスの発見に至る一連の研究成果を総括。
●マナマコの主要構成微生物群とそれらの作用をまとめ、マナマコのホロビオントを初めて明示。
●ナマコ以外の海洋生物のホロビオント研究やプロバイオティクス探索に応用可能な方法論も記載。
概要
北海道大学大学院水産科学院博士後期課程の俞 隽文氏(研究当時)、北海道大学大学院水産科学研究院の美野さやか助教、澤辺智雄教授、北海道立総合研究機構水産研究本部函館水産試験場の酒井勇一主任主査(研究当時)らの研究グループは、マナマコの微生物群集に関する一連の研究を取りまとめ、マナマコのホロビオントを研究するための方法論と得られた知見を総括した総説を公表しました。また、マナマコと微生物の相互作用に関する研究成果もまとめ、マナマコのホロビオントを初めて示しました。
マナマコは価値の高い水産資源であるものの、乱獲などにより、天然資源が減少しています。北海道では、酒井主任主査らの尽力により、マナマコの種苗生産技術や優れた稚仔用餌料の開発が進み、マナマコの資源の維持・拡大に貢献してきました。しかしながら、マナマコは成長が遅く、かつ成長初期の成長格差や減耗、そして疾病は、未だに、種苗の安定生産に向けた改善点となっています。いかなる生物も、微生物と絶え間なく関係していることから、宿主と共生微生物を超生物体「ホロビオント」と捉える考え方が知られています。ホロビオントの健全性を維持することは、宿主生物の生産性向上などに寄与する可能性があります。そこで、澤辺教授らの研究グループのみならず、他のナマコと微生物との相互作用に関する研究をまとめることにより、マナマコのホロビオントを明らかにすることを研究の目的にしました。
マナマコでは、成体を対象とした微生物群集構造解析が一般的でした。これに、澤辺教授らの研究グループが取り入れた新たな研究アプローチを取り入れることにより、マナマコのホロビオントを形成する中心的な微生物群を明らかにすることができました。また、ホロビオント研究には、培養を介さない微生物群集構造解析に加え、微生物の培養株コレクションを丹念に集積することも必要であり、このコレクションは将来的にホロビオントの健全性を維持する微生物株の発見に資することも明記しました。本研究成果は、マナマコのみならず他の有用な水圏生物種の種苗生産の高度化に資することが期待されます。
なお、本研究成果は2026年7月4日(土)公開のCurrent Microbiology誌にオンライン掲載されました。
論文名:The sea cucumber holobiont and probiotics: recent progress on Apostichopus japonicus(マナマコのホロビオントとプロバイオティクス)
URL:https://doi.org/10.1007/s00284-026-04888-0
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