2026年3月13日
ポイント
●ヒト大腸にも胆汁酸取り込みに関与する経路が存在する可能性を示唆。
●ASBTとは異なる胆汁酸輸送機構の存在を、腸管モデル細胞で確認。
●ヒト大腸オルガノイドにより、OATP1B3の管腔側局在と胆汁酸取り込みへの関与を示唆。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院の小林彰子准教授、東京大学大学院農学生命科学研究科(当時)の黒部(髙島)優季氏、齋藤佑太氏、宮脇里奈氏、同研究科の三坂 巧准教授、溝井順哉准教授、群馬大学生体調節研究所粘膜エコシステム制御分野の柳澤宏太氏、宮内栄治准教授、佐々木伸雄教授、東京理科大学薬学部の荻原琢男教授らの研究グループは、胆汁酸の再吸収は回腸末端が中心という従来理解に加え、ヒト大腸にも一次胆汁酸の取り込みに関与しうる経路が存在する可能性を示しました。胆汁酸は食後に胆嚢から十二指腸へ分泌され、小腸で脂質の消化吸収を助けた後、主に回腸末端で90%以上が再吸収され、門脈を介して肝臓へ戻されて再利用されます(腸肝循環)。この再吸収を担う主要輸送体としてApical Sodium-dependent Bile acid Transporter(ASBT)が知られ、胆汁酸動態は脂質吸収のみならず、コレステロール恒常性や代謝・炎症関連疾患とも深く関わることから注目されてきました。
本研究では、腸管モデルとして広く用いられるCaco-2細胞における胆汁酸取り込みを速度論的に精密解析し、少なくとも二つの輸送機構の関与を示唆しました。さらに、ASBTに加えてNa⁺非存在下でも取り込み活性が残存し、低pH条件で取り込みが増加する点に着目して候補輸送体を検討した結果、OATP1B3が胆汁酸取り込みに関与する可能性が示され、免疫染色によりアピカル側(管腔側)への局在が確認されました。加えて、ヒト正常大腸由来オルガノイドを用いた解析では、OATP1B3が大腸で発現し、単層膜培養においてアピカル側局在が示されるとともに、胆汁酸取り込み活性が確認されました。
以上の結果から、条件次第でヒト大腸上皮が胆汁酸取り込みに関与しうることが示唆され、本知見は大腸の生理機能の再評価や、胆汁酸が関与する疾患メカニズムの理解、さらには新たな創薬・診断研究の展開につながることが期待されます。
なお、本研究成果は、2026年2月20日(金)公開のJournal of Biological Chemistry誌にオンライン掲載されました。
論文名:Contribution of organic anion transporting polypeptides to bile acid uptake in the Caco-2 cell monolayer and gastrointestinal tract(Caco-2細胞単層膜及び消化管における胆汁酸取り込みに関与する有機アニオン輸送ポリペプチド)
URL:https://doi.org/10.1016/j.jbc.2026.111205
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