2026年2月5日
ポイント
●人工衛星と最新の予測モデルを用いて30年前に発生した漁業被害の原因究明に成功。
●冬季オホーツク海からの冷たい海水の流入が、夏季の著しい底層の酸素濃度低下の鍵を握る。
●予測モデルの運用に係る観測のコストを軽減させつつも、現地での確認により精度向上に期待。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院の阿部泰人准教授らの研究グループは、ホタテガイやタラ類、カレイ類、エビ類などの水産資源が豊富な北海道南部の噴火湾(別名内浦湾、海底水深約100m)において、30年前の1995年夏季に深刻な漁業被害をもたらした「貧酸素水塊」の発生を、長期間海洋をモニタリングしている人工衛星等の環境データと最新の予測モデルを用いて再現することに成功しました。
貧酸素水塊は、著しく水中の酸素濃度が低い水塊(酸素濃度2ml/l以下)です。世界中の閉鎖性水域の海底付近で発生することが知られており、一旦これが発生すると、呼吸で酸素を必要とする底生魚類などの海洋生物が酸欠状態に陥り、場合によっては大量死に至ります。最も深刻だったのは1995年に発生したもので、当時の酸素濃度は1ml/lを下回っており、死亡したカレイ類が海面に浮上するなど多大な漁業被害が生じました。
今から30年も前に海中で何が起きていたのかを明らかにするのは容易ではありません。ただ、その手掛かりはありました。阿部准教授らの研究グループでは、2012年より溶存酸素を含む海洋環境モニタリングを継続しており、そのデータを活用して夏季に低下する酸素濃度を予測するモデルの構築に成功しておりました。しかしそれでも30年前には遡れません。そこで長期間モニタリングしている地球観測衛星に着目しました。この長期データをモデルに取り込むことで、1995年3月はオホーツク海の海氷融解水の影響を受けた「沿岸親潮」が噴火湾に大量に流れ込み、それが酸素回復を阻害したことで8月に深刻な貧酸素発生に繋がったことが明らかになりました。今回開発したモデルは、データ取得のために観測船で燃料を使って現地に赴く前に貧酸素水塊の発生予測データを提供し、現場観測データで確認することで、いっそう信頼性の高い予測が可能となりました。
なお、本研究成果は、2026年1月9日(金)公開のInternational Journal of Remote Sensing誌にオンライン掲載されました。
論文名:Application of satellite remote sensing data for predicting the occurrence of hypoxia at the seabed: a case study in Funka Bay, Japan(衛星リモートセンシングを活用した海底における貧酸素水塊の発生予測:日本の噴火湾における事例解析)
URL:https://doi.org/10.1080/01431161.2026.2612824
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