2025年9月10日
ポイント
●年4回、水深0-1000m間を昼夜鉛直区分採集した動物プランクトン試料について画像解析。
●優占カイアシ類2属には日周鉛直移動と季節的鉛直移動の有無に種間差があることを発見。
●動物プランクトンの動態解明への画像イメージング解析の有用性を証明。
概要
北海道大学大学院水産科学院修士課程(研究当時)の高 天氏と同大学大学院水産科学研究院の山口 篤准教授の研究グループは、西部北太平洋亜寒帯循環の1定点の水深0-1000m間について、4季節の昼夜鉛直区分採集を行った試料について、画像イメージング機器のZooScanによる測定を行い、動物プランクトン相に優占するカイアシ類2属(メトリディア属とユーカラヌス属)の出現個体数とバイオマスの季節変化と昼夜鉛直分布を明らかにしました。メトリディア属の優占種のメトリディア・パシフィカ(メト)は、昼間は深海に分布し、夜間は表層に移動する日周鉛直移動を行っていたのに対し、ユーカラヌス・ブンギ(ブンギ)は日周鉛直移動は行いませんでしたが、季節的に分布深度を変える季節的鉛直移動を行っていました。メトの個体群構造に季節性は見られませんでしたが、ブンギの個体群構造は明確な季節パターンを示しました。これは、両種とも表層近くで繁殖しますが、ブンギは体サイズが大きく、1年以上の世代時間を持ち、再生産を行う季節が明確に決まっているのに対し、メトは年間を通じて日和見的に繁殖することの反映と考えられました。ZooScanを用いた画像イメージング解析は、魚類の餌環境の指標として重要な、動物プランクトンのサイズやバイオマス量の測定を、従来行われていた顕微鏡観察よりも、短時間かつ正確に評価することが可能です。今後、様々な海域や環境における動物プランクトンについて画像イメージング解析をすることにより、魚類の餌環境の評価が、より高精度かつ短時間に行えることが期待されます。
なお、本研究成果は、2025年9月9日(火)公開のPeerJ誌にオンライン掲載されました。
論文名:Analysis of imaging data on seasonal changes in the population structure and vertical distribution of two dominant planktonic copepod species in the western subarctic Pacific(西部北太平洋亜寒帯域における優占浮遊性カイアシ類2種の個体群構造と鉛直分布の季節変化に関する画像イメージング解析)
URL:https://doi.org/10.7717/peerj.19956
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ZooScanにより取得された優占カイアシ類2種の各発育段階の画像データ。左はメトリディア属、右はユーカラヌス・ブンギ。カイアシ類は脱皮して成長し、C1-C6は発育段階。F: 雌、M: 雄。