2025年5月12日
ポイント
●スケトウダラは大陸棚周辺海域に分布する底生魚類で重要な漁業資源。
●本種の分布を春季の北海道南方36km及び172km沖合の表層で確認。
●越冬後の栄養回復のために南下回遊により季節を先取りしていた可能性を指摘。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院の山村織生准教授、松野孝平助教、同大学水産学部附属練習船おしょろ丸二等航海士の大和田真紀助教(研究当時、現 附属練習船うしお丸助教)、同船長の亀井佳彦教授の研究グループは、2022年5月下旬に実施された附属練習船おしょろ丸による実習中に、北海道南方はるか沖合の2地点(図1のStn.1、Stn.2)での表層トロール網(最大採集水深33m)の操業において、合計2,999尾のスケトウダラを採集しました。さらに南側の地点(図1のStn.3)での操業では、魚類が全く採集されませんでした。
採集された地点(Stn.1、Stn.2)は北海道沿岸からそれぞれ36kmと172km離れており、海底水深はそれぞれ1,800mと5,500mでした。今回の採集は、従来の北西太平洋でのスケトウダラの沖合分布記録を大きく広げると共に、本種には稀な昼間の表層での分布の報告となります。両地点での平均体長はいずれも39cmでしたが、南側のStn.2の方が良好な摂餌と栄養の状態を示しました。この地点は春季ブルーミングの盛期にあり、利用していた餌は主にカイアシ類でした。
これらの結果から、今回のスケトウダラは春季ブルーミングがもたらす豊富な餌を利用するため北海道沿岸から南下回遊したと推定され、その後は季節的なブルーミングの進行と共に北上するものと考えられました。北西太平洋のスケトウダラは越冬により低下した肥満度を5月中に急激に回復することが知られており、今回観察された沖合分布がその回復に寄与している可能性が指摘されます。
なお、本研究成果は、2025年4月18日(金)公開の魚類学国際誌Journal of Ichthyology誌にオンライン掲載されました。
論文名:Mass occurrence of walleye pollock Gadus chalcogrammus (Gadidae) in the surface layer of the Oyashio Basin (Western North Pacific): Possible benefit from abundant copepods(北西太平洋親潮海盆におけるスケトウダラの大量出現:豊富なカイアシ類からの利益の可能性)
URL:https://doi.org/10.1134/S0032945224602471
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