2025年2月7日
ポイント
●東南アジアの漁業資源が世界的にユニークであることを解明。
●特に、今後漁獲量を増加させることが可能な漁業資源が豊富に残っていることを解明。
●発展途上国の持続的漁業発展に貢献。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院・同大学大学院国際食資源学院の松石 隆教授は、東南アジア漁業センター(SEAFDEC)、国連食糧農業機関(FAO)などの統計資料や、各国の漁業資源に関する報告書などを解析し、東南アジアの漁業の発展が世界的にユニークであることや、今後漁獲量を増加させることが可能な漁業資源が豊富に残っていることを解明しました。
東南アジアの漁業資源は1980年代から乱獲であるとの指摘がありましたが、漁獲量は増加の一途をたどり、地域(大陸単位)ごとの漁獲量の過去30年間の増加量は世界第1位でした。また、過去30年間の1人当たりの魚介類の消費量の増加が17kg、動物蛋白質に占める魚介類の割合が23%と、いずれも他の地域と比べ世界1位でした。これらの統計値に関する東南アジアを対象とした分析は今まで行われておらず、本研究が初めて東南アジア漁業の世界的なユニークさを解明しました。
また、東南アジアにおける漁業資源評価結果105件を集めたところ、乱獲状態資源の割合は3~4割と世界平均と大きな差はない一方、漁獲量の増加が可能(Underfished)とされる資源の割合が東南アジアでは49%と世界平均の4倍多く、豊かな資源が残っていることが分かりました。この理由は、生物多様性や低効率で生態系にやさしい漁法が影響しているものと考察されました。
本研究の結果は、東南アジア地域の持続的漁業の達成の目標点を示唆しており、今後の東南アジアの漁業の発展、また今後、漁業の発展が見込まれる熱帯の発展途上地域の漁業発展の計画に貢献することが期待されます。
なお、本研究成果は、2025年2月5日(水)公開の国際学術雑誌Fisheries Science誌に掲載されました。
論文名:Status of Southeast Asian fisheries: distinctive characteristics and pathways to sustainable fisheries(東南アジアの漁業の現状:その特徴と持続可能な漁業への道筋)
URL:https://rdcu.be/d8NXa
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