2025年1月31日
ポイント
●夏季の南極海におけるマクロ動物プランクトン組成を水産庁漁業調査船開洋丸により調査。
●1996年の調査と比べて、サルパ類が減少し、オキアミ類と端脚類が増加していたことを発見。
●気候変動による南極海の海洋生態系への影響の理解に大きく貢献。
概要
北海道大学水産学部4年生の浦部一平氏(研究当時)、同大学大学院水産科学研究院の松野孝平助教、山口 篤准教授、東京海洋大学の村瀬弘人准教授、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産資源研究所の松倉隆一研究員、佐々木裕子研究員らの研究グループは、南極海東インド洋区における南極周極流の南下と温暖化が、マクロ動物プランクトン組成に影響を与えることを明らかにしました。
マクロ動物プランクトンは、水圏における2-20cm程度の動物プランクトンの総称で、オキアミ類などの甲殻類やサルパ類などのゼラチン質プランクトンを含みます。海洋生態系においては、一次生産を高次生物へ受け渡す重要な役割を持ちます。南極海のマクロ動物プランクトン研究は、ナンキョクオキアミに関するものが圧倒的に多く、群集全体を網羅した研究は少ない現状にあります。また、南極海東インド洋区では、温暖化によりサルパ類が増加しているという報告がこれまで多数を占めていました。しかし、近年の環境変化がマクロ動物プランクトン群集全体にどのように影響を与えているかについては十分に理解されていませんでした。そこで研究グループは2018/2019年夏季に、南極海東インド洋区の東経90~150度に及ぶ広い海域にて水産庁漁業調査船「開洋丸」によりマクロ動物プランクトンの調査を行い、豪州による1996年の調査と比較することで、南極周極流の南下と温暖化によって、サルパ類が大幅に減少し、代わりにオキアミ類と端脚類が増加していることを明らかにしました。
本研究の成果は、南極海での環境変化によるマクロ動物プランクトンの応答を明らかにしており、気候変動により変化する南極海海洋生態系の将来予測の精度向上に貢献する知見となります。
なお本研究成果は、2025年1月6日(月)公開のProgress in Oceanography誌にオンライン掲載されました。
論文名:Spatio-temporal changes in the macrozooplankton community in the eastern Indian sector of the Southern Ocean during austral summers: A comparison between 1996 and 2018-2019(夏季の南極海東インド洋区におけるマクロ動物プランクトン群集の時空間変化:1996年と2018-2019年の比較)
URL:https://doi.org/10.1016/j.pocean.2025.103414
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優占したオキアミ類、端脚類及びサルパ類の湿重量の水平分布。赤丸が1996年、黒丸が2018/2019年の結果を示す。サルパ類が大幅に減少していたが、オキアミ類と端脚類は増加していた。