2024年9月27日
ポイント
●アポ-12′-カプソルビナールが炎症誘導したマクロファージに対して抗炎症作用を示すことを発見。
●アポ-12′-カプソルビナールは細胞内Nrf2を活性化し、標的遺伝子の発現を誘導することを発見。
●アポカロテノイドの活性発現にポリエン鎖内部のα,β-不飽和カルボニル構造が関わることを示唆。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院の高谷直己助教、細川雅史教授、別府史章准教授、同大学大学院水産科学院修士課程2年の宮房拓生氏(研究当時)、神戸薬科大学の山野由美子教授の研究グループは、アポカロテノイドの一種であるアポ-12′-カプソルビナールが、免疫細胞の一種であるマクロファージに対して抗炎症作用を示すとともに、細胞内防御システムであるnuclear factor erythroid 2-related factor 2(Nrf2)を活性化する効果を見いだしました。さらに、複数のアポカロテノイド間で比較したところ、上述の活性発現には、ポリエン直鎖内部のα,β-不飽和カルボニル構造が関わる可能性が示されました。
アポカロテノイドは、カロテノイドのポリエン直鎖上の二重結合が酵素的あるいは非酵素的に酸化開裂されて生じます。ヒトを含む動物ではカロテノイド開裂酵素が同定されていることに加えて、生体内でいくつかのアポカロテノイドが見いだされています。しかし、その生理的意義については不明な点が多いのが現状です。そこで本研究では、アポ-12′-カプソルビナールを含む複数のアポカロテノイドを化学合成し、様々な慢性疾患の発症要因となる炎症に対する抑制作用を評価しました。アポ-12′-カプソルビナールをマクロファージに処置したところ、炎症誘導物質添加による炎症性サイトカインの発現増加が抑制されることが分かりました。さらに、アポ-12′-カプソルビナールは転写因子Nrf2の核内移行を促進し、標的遺伝子の発現を誘導することが分かりました。一方、アポ-12′-カプソルビナールのC-8にヒドロキシ基を導入したアポ-12′-ミチロキサンチナールでは、上述の活性が認められませんでした。以上より、アポ-12′-カプソルビナールによる抗炎症及びNrf2活性化作用の発現には、ポリエン直鎖内部にあるα,β-不飽和カルボニル構造、特にβ位炭素が関わる可能性が示されました。本研究成果は、唐辛子などの一部の食品やヒト初乳中にも見いだされるアポ-12′-カプソルビナールについて、初めて生物活性を明らかにしたものであり、アポカロテノイドの生理的意義の解明や活用に向けた研究進展のための基礎知見となることが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年8月16日(金)公開のArchives of Biochemistry and Biophysics誌にオンライン掲載されました。
論文名:Apo-12′-capsorubinal exhibits anti-inflammatory effects and activates nuclear factor erythroid 2-related factor 2 in RAW264.7 macrophages(アポ-12′-カプソルビナールは、RAW264.7マクロファージに対して抗炎症及びNrf2活性化作用を示す)
URL:https://doi.org/10.1016/j.abb.2024.110125
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