2024年8月30日
ポイント
●ホタテの廃棄貝殻をバイオソーベントとして吸着剤を開発。
●鉛イオン吸着において従来の約2-4倍となる非常に大きい吸着容量を保有。
●廃棄貝殻から簡便に作成可能で、重金属イオンの効率的な吸着除去・回収への利用に期待。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院の丸山英男准教授は廃棄ホタテ貝殻を用いて、従来のバイオソーベントと比較し約2-4倍もの吸着容量を有する吸着剤を開発しました。
北海道のホタテ生産量は日本の約9割を占める一方で、漁獲や加工時に生じる廃棄貝殻は道内の水産廃棄物の約4割にも上るため、廃棄貝殻を利活用する様々な取り組みが行われています。廃棄貝殻を吸着剤に利用する研究は行われていたものの、粉砕した貝殻粉末粒子や焼成貝殻粒子を用いたものがほとんどで、表面修飾を行った研究は多くありませんでした。
そこで本研究では、ボールミルを用いて廃棄ホタテ貝殻破片とシュウ酸ナトリウムを湿式粉砕し吸着剤粒子を得ました。FT-IR測定の結果、粉砕貝殻表面にはカルボキシル基が修飾されたことが分かりました。鉛イオンを用いた回分式吸着実験の結果(液相平衡pH4.5-4.7)、吸着速度と吸着平衡関係は共にLangmuir型吸着速度式及び吸着等温式でよく説明できることが分かりました。均一な吸着サイトとの可逆反応に基づいたLangmuir型吸着の速度式と等温式によくしたがうことは、カルボキシル基の修飾により、カルボキシル基が均一な吸着サイトとみなせるほど優先的に貝殻表面に存在していることが示唆されました。また、既報のバイオソーベントによる鉛吸着量は、焼成貝殻吸着剤で1.33mmol/g、オオイタドリ由来吸着剤で1.22mmol/gなどの報告されており、本研究では5.45-6.23mmol/gであることから非常に高い吸着容量を持つ吸着剤であることが分かりました。
なお、本研究は2024年3月30日(土)にSurfaces誌にオンライン掲載されました。
論文名:Preparation of Adsorbent from Mechanochemical Reaction-Based Waste Seashell with Sodium Oxalate and Its Application in Pb Ion Adsorption(廃棄貝殻とシュウ酸ナトリウムのメカノケミカル反応による吸着材の調製と鉛イオン吸着への応用)
URL:https://doi.org/10.3390/surfaces7020014
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