2023年11月1日
ポイント
●受精卵から着底稚仔に至るマナマコの成長初期の微生物群集構造解析を3年にわたり繰り返し実施。
●全試料に共通性が高い4種の微生物群をコア微生物として推定。
●コア微生物の中で、スルフィトバクター属の細菌が稚ナマコの成長を促すことを発見。
概要
北海道大学大学院水産科学院博士後期課程3年及び同大学DX博士人材フェローシップ生の俞 隽文氏(研究当時)、同大学院水産科学院修士課程2年の小池笙太郎氏、同大学院水産科学研究院の澤辺智雄教授、北海道立総合研究機構水産研究本部函館水産試験場の酒井勇一主任主査らの研究グループは、マナマコの成長初期に高頻度で見いだされるコア微生物を、メタゲノム技術を用いて明らかにするとともに、コア微生物の中からマナマコの成長を促す新たな海洋細菌を発見しました。
マナマコは、乱獲などによって天然資源が著しく減少しています。北海道では、酒井主任主査らの尽力によりマナマコの種苗生産手法や良質な稚仔用の餌料が開発され、マナマコ資源の維持・拡大に貢献しています。しかしながら、マナマコは成長が遅い上、成長初期の成長格差や減耗はマナマコの種苗の安定生産に向け改善しなければならない課題となっています。特に、マナマコの成長を促す新たなプロバイオティクスの発見が切望されていました。
本研究では、マナマコの受精卵を実験室内で繰り返し育てる実験を3年間にわたり実施し、マナマコの初期成長期に高頻度で見いだされるコア微生物を、メタゲノム技術を用いることで探索しました。その結果、4種の微生物がコア微生物として見いだされ、そのうち1種は、マナマコの胞胚から分離したスルフィトバクター属細菌であることが分かりました。この細菌を混合した餌料を稚ナマコに投与したところ、成長促進効果が観察されました。本研究成果は、新たなプロバイオティクスを活用したマナマコの種苗生産の高度化への展開が期待されます。
なお、本研究成果は2023年10月24日(火)にAnimal Microbiome誌に公開されました。
論文名:Unveiling the early life core microbiome of the sea cucumber Apostichopus japonicus and the unexpected abundance of the growth-promoting Sulfitobacter(マナマコの初期成長期のコア微生物群からの成長促進作用を有するスルフィトバクターの発見)
URL:https://doi.org/10.1186/s42523-023-00276-2
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放流される稚ナマコ Fish of the Month website(https://edu.fish.hokudai.ac.jp/fom/)より