2023年8月23日
ポイント
●西部北太平洋亜寒帯域における時系列観測定点での水深1,000m までの昼夜4季節採集試料を解析。
●クラゲ類はヒドロクラゲ類のアグランサ・デジターレが出現個体数の92%を占めて最優占。
●成熟個体の大半は年1回、7月にのみ出現していたことから、年1世代の生活史を持つと推定。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院の山口 篤准教授らの研究グループは、西部北太平洋の亜寒帯域の時系列採集定点において、年4回、昼夜共に水深1,000 mまでを水深毎に区分採集をした、動物プランクトン試料中に出現したクラゲ類の生態を明らかにしました。
クラゲ類の中では、ヒドロクラゲ類のアグランサ・デジターレ(Aglantha digitale)が出現個体数の92%を占めて最優占していました。本種の傘長は2-19 mmで、生殖腺長が傘長の10%以上を占める成熟個体の出現は、7月に限られていました。成熟個体の出現が年1回の限られた季節であったことから、本種は年1世代の生活史を持つものと解釈されました。
本研究は、これまで知見の乏しかった外洋域において優占するクラゲ類の生態を、西部北太平洋の亜寒帯域の時系列観測定点において明らかにしたものです。これは西部北太平洋の表層から深海に及ぶ海洋生態系の理解を深める重要な知見です。
なお、本研究成果は、2023年7月31日(月)にOceans誌でオンライン掲載されました。
論文名:Seasonal changes in vertical distribution and population structure of the dominant hydrozoan Aglantha digitale in the western subarctic Pacific(西部北太平洋亜寒帯域における優占ヒドロクラゲ類アグランサ・デジターレの鉛直分布と個体群構造の季節変化)
URL:https://doi.org/10.3390/oceans4030017
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西部北太平洋亜寒帯域の時系列観測定点での水深0-1,000m層に出現するクラゲ類の中で、最優占するヒドロクラゲ類のアグランサ・デジターレ(左)。本研究では体長としての傘長(緑)と、生殖腺長(赤)を測定し、生殖腺長が傘長の10%以上を占める個体を成熟個体として扱った。成熟個体の出現は年4回の調査のうち、7月においてのみ優占していた。