2023年7月24日
ポイント
●北海道八雲町にオスのイチョウハクジラが死亡漂着し、本種の最北漂着記録を更新。
●主に熱帯から温帯に生息する種で、大陸性気候帯における漂着が確認されたのは初。
●これまで知られていたよりも、イチョウハクジラの分布域が広いことを示唆。
概要
北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの黒田実加特任助教、同大学大学院水産科学研究院の松石 隆教授らの研究グループは、2022年2月4日に北海道八雲町落部の海岸に漂着した全長477cmのオスのオウギハクジラ属鯨類がイチョウハクジラ(Mesoplodon ginkgodens)であると同定しました。
オスの歯の形がイチョウの葉に似ていることからその名が付いたイチョウハクジラは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「データ不足」に分類されるほど、生態に不明な点が多いクジラです。日本では年間平均300件程度の鯨類の漂着がありますが、イチョウハクジラの漂着はそのうち1件あるかないかです。なお、北海道では、これまで漂着がありませんでした。
研究グループは、外部形態調査、DNA分析によって本個体がイチョウハクジラであると同定し、日本及び世界のストランディングレコードを調査することで、本個体がイチョウハクジラの世界最北漂着記録であることを明らかにしました。これは大陸性気候帯では初めての漂着記録です。これによって、イチョウハクジラの分布域が従来知られていた温帯から熱帯よりも広い可能性が示されました。
本研究は、未だ知見の少ないイチョウハクジラの分布や生態に関する貴重な知見であり、今後の本種の生態学的研究に貢献することが期待されます。
なお本研究成果は、2023年7月9日(日)にAquatic Mammal誌にオンライン掲載されました。
論文名:Northernmost Record of the Ginkgo-Toothed Beaked Whale (Mesoplodon ginkgodens)(イチョウハクジラの最北漂着記録)
URL:https://doi.org/10.1578/AM.49.4.2023.356
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