2024年7月2日
ポイント
●マナマコの受精卵や幼生から6種の新種を発見。
●その中で1種の細菌は新属として分類できる条件を満たしていることを確認。
●2種の細菌には「函館が由来」であることを意味する種形容名「hakodatensis」を初めて命名。
概要
北海道大学大学院水産科学院博士後期課程3年の俞 隽文氏(研究当時)、同大学院水産科学院修士課程2年の山野瞭太氏(研究当時)及び工藤梨花氏、同大学大学院水産科学研究院の美野さやか助教、澤辺智雄教授、北海道立総合研究機構水産研究本部函館水産試験場の酒井勇一主任主査らの研究グループは、マナマコの受精卵や幼生などから、6種の新規な細菌を見いだし、新種として提案しました。
北海道では、酒井主任主査らの尽力によりマナマコの種苗生産手法や良質な稚仔用の餌料が開発され、資源の維持・拡大に寄与しています。さらに、種苗の安定生産に向けマナマコと微生物の相互作用を活用した新たな技術基盤の構築が期待されています。この研究の一環として、本グループは、受精卵や幼生から250株もの細菌を分離し、マナマコ・パイオニア微生物コレクションとして保管していました。
本研究では、この微生物コレクションの中から新規性の高い菌株を選抜し、微生物ゲノムの情報を比較することで各細菌の性質を調べました。その結果、少なくとも6種の細菌が新種であることが分かり、その中で1種は新属に分類することが可能でした。それらは、それぞれ、Aliamphritea hakodatensis(新属新種)、Thalassotalea hakodatensis、Neptuniibacter victor、Marinobacter apostichopi、Pseudoalteromonas apostichopi及びVibrio apostichopiと命名し、新種の提案を行いました。本研究成果は、IUCNでレッドリストに登録されたマナマコの種苗生産技術の高度化への活用が期待されます。なお、本研究成果は、2022年8月10日公開のPLoS One誌、2023年6月2日公開のPLoS One誌、2023年8月15日公開のPLoS One誌及び2024年6月28日(金)公開の Current Microbiology誌に掲載されました。
論文名:The description of Pseudoalteromonas apostichopi sp. nov., Vibrio apostichopi sp. nov. and Marinobacter apostichopi sp. nov. from the fertilized eggs and larvae of Apostichopus japonicus(マナマコの受精卵や幼生から分離されたPseudoalteromonas apostichopi sp. nov., Vibrio apostichopi sp. nov. 及び Marinobacter apostichopi sp. nov. の記載)
URL:https://doi.org/10.1007/s00284-024-03751-4
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左:マナマコの幼生(Fish of the Month website, https://edu.fish.hokudai.ac.jp/fom/より)
右:分離された新種の細菌の一種(Vibrio apostichopi、撮影:北海道大学大学院水産科学研究院 山木将悟助教)