2024年5月31日
ポイント
●イトマキヒトデが「五つんばい行動」によってカニを捕食できることを発見。
●本種は動きの遅い「掃除屋」だと考えられていたが、素早い動物も捕まえる「捕食者」と判明。
●本研究は動きの遅い生物の捕食行動の研究を刺激し、その理解に貢献することが期待。
概要
北海道大学大学院水産科学院修士課程1年の具志堅晴人氏と同大学院水産科学研究院の和田 哲教授の研究グループは、函館湾に生息するイトマキヒトデが、これまで知られていなかった新たな行動を示し、この行動がヒトデよりも動きの速いカニを捕獲する行動であることを明らかにしました。そして、この行動を「五(い)つんばい行動(Standing on tiptoe)」と名付けました。
イトマキヒトデは日本で広く見られ、全国の水族館のタッチプールなどでよく見られるヒトデです。このヒトデは海藻や生き物の死骸を食べる「海の掃除屋」として知られていました。動きが遅いため、カニのように動きの速い動物は捕食できないと考えられていました。
本研究では、イトマキヒトデが5本の腕(星形の先端部分)だけを水槽に付けた状態で、盤(星形の中心部分)をゆっくりと浮かせて(五つんばい行動)、その下にカニが入ってくると、盤を下ろしてカニを捕まえることを発見しました。
五つんばい行動の発見によって、イトマキヒトデが自分よりも素早い小動物も捕まえて食べる「巧妙な捕食者」でもあることが明らかとなりました。
本研究の成果は、動きの遅い無脊椎動物の食性解明に貢献することが期待されます。海には貝類など、動きの遅い生き物が多く知られています。これらの動きの遅い生き物たちも、それぞれ独自の巧妙な捕食行動によって、素早い生き物を捕食しているのかもしれません。
なお、本研究成果は、2024年5月31日(金)にPlankton and Benthos Research誌で公開されました。
論文名:”Standing on tiptoe”: A novel foraging technique in the starfish Patiria pectinifera(”五つんばい行動”:イトマキヒトデの新しい捕食行動)
URL:https://doi.org/10.3800/pbr.19.84
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