2024年5月17日
ポイント
●函館産の紅藻”ダルス”のうち、色落ちした低利用資源からオリゴ糖を調製。
●調製したオリゴ糖は、弱いながらもα-アミラーゼとα-グルコシダーゼ活性を阻害することを解明。
●健康機能性を示す成分の調製によって未利用資源の有効活用への貢献に期待。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院の岸村栄毅教授と熊谷祐也准教授、カメルーン・マルア大学のムネムネ マーティン アライン准教授、岡山県農林水産総合センター生物科学研究所の畑中唯史所長らの研究グループは、低利用資源の紅藻ダルス(Devaleraea inkyuleei)の中でも、色落ちによって価値がより低くなるダルスの活用を目指し、オリゴ糖を調製しました。また、調製したオリゴ糖の血糖抑制効果をはかるため、α-アミラーゼとα-グルコシダーゼ阻害活性を調べました。
ダルスは寒い地域に生育する紅藻で、日本では北海道から岩手県にかけて生育しています。1、2月のダルスは赤色ですが、4月以降になると色落ちが生じます。ダルスの赤色にはフィコビリタンパク質が含まれており、その健康機能性で注目を集めていますが、色落ちしたダルスはフィコビリタンパク質の量が減少するため、価値が一層低下します。そこで本研究では、色落ちしたダルスに含まれる成分を明らかにし、その有効利用を試みました。色落ちしたダルスには細胞壁多糖のキシランが多く含まれています。そこからオリゴ糖を調製し、その機能性として血糖上昇に関わるα-アミラーゼとα-グルコシダーゼ阻害活性を調べました。オリゴ糖の阻害活性は検出されましたが、薬として使われているアカルボースに比べて弱いものでした。このような弱い活性は大量摂取による副作用の危険性が少なく、食事と一緒に摂取できることなどから血糖上昇を緩やかにする可能性が示唆されました。
本研究成果は、価値の低いダルスからオリゴ糖が調製でき、その機能性として血糖関連の酵素に対して弱い阻害を示すことで、低利用資源ダルスの有効活用に貢献することが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年3月29日(金)にMolecules誌でオンライン掲載されました。
論文名:Understanding Antidiabetic Potential of Oligosaccharides from Red Alga Dulse Devaleraea inkyuleei Xylan by Investigating α-Amylase and α -Glucosidase Inhibition(紅藻ダルス由来のオリゴ糖がα-アミラーゼ及びα-グルコシダーゼ阻害による抗糖尿病薬への可能性検証)
URL:https://doi.org/10.3390/molecules29071536
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