2023年5月26日
北海道大学
海洋研究開発機構
北里大学
ポイント
●画像イメージング解析を肉食性動物プランクトン(浮遊性端脚類)に対して実施。
●従来の顕微鏡解析では困難であった、群集構造や個体群構造の解析が正確かつ短時間に実現可能。
●画像イメージング解析は、今後の動物プランクトン研究のスタンダードな手法になると期待。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院の山口 篤准教授、海洋研究開発機構の喜多村稔副主任研究員と北里大学海洋生命科学部の山田雄一郎講師らの研究グループは、西部北太平洋亜寒帯域の定点K2において、周年をカバーする年4回、水深0-1,000 m間を昼夜鉛直区分採集された試料に出現した浮遊性端脚類について、画像イメージング機器であるZooScan(HYDROPTIC社製)を用いた画像解析を行い、出現個体数、群集構造、優占種テミスト・パシフィカの個体群構造を明らかにしました。
本研究では浮遊性端脚類について合計6,737枚の画像を取得し解析しました。その結果、8科10属10種が出現し、最も出現個体数密度の多かった種はテミスト・パシフィカで、全浮遊性端脚類出現個体数の86%を占めて卓越していました。浮遊性端脚類10種の鉛直分布は大きく次の3タイプに分けられました。①表層に分布し、日周鉛直移動を行う優占3種、②深海にのみ分布し、日周鉛直移動を行わない4種、③両者の中間の狭い水深範囲内に分布し、表層や深海には出現せず、日周鉛直移動を行うこともある3種。優占種のテミスト・パシフィカには、小型な若齢個体の個体群への加入が10月と4月の年2回見られ、各個体群の成長は9ヶ月(10月-7月)ないしは1年(4月-4月)にわたりトレースできました。
本研究の成果は、動物プランクトンの群集構造や主要種の個体群構造解析に、ZooScan等の画像イメージング技法の有用性を示しており、本研究で開発された手法は、今後の海洋動物プランクトンを対象とした研究においてスタンダードになることが期待されます。
なお本研究成果は、2023年5月26日(金)にJournal of Plankton Research誌でオンライン掲載されました。
論文名:Diel, seasonal, and vertical changes in the pelagic amphipod communities in the subarctic Pacific: Insights from imaging analysis(北太平洋亜寒帯域における浮遊性端脚類群集構造の、日周、季節及び鉛直的な変化:画像解析からの洞察)
URL:https://doi.org/10.1093/plankt/fbad017
詳細はこちら
本研究で用いた画像イメージング解析のZooScan(中央)と、画像としてスキャンされた動物プランクトンの浮遊性端脚類8科10属10種。