- 発表のポイント
- 2010年~2018年の調査期間中の津軽海峡における海水温は、春季には将来予想されている地球温暖化の3~20倍の速度の昇温傾向が見られた一方で、夏季と秋季には昇温傾向よりも急速な降温傾向が見られた。
- 海水の二酸化炭素濃度の上昇速度は、大気の二酸化炭素濃度と比較して5~2倍の速度であり、海洋酸性化が急速に進行した。
- 大型の植物プランクトンである珪藻類は、海洋酸性化の影響下では小型の植物プランクトンとの優占群集をめぐる競争において不利と考えられていたが、調査期間中の珪藻類の細胞数密度は増加傾向を示した。さらに、珪藻類の増加によってプランクトン食性の水産養殖種(ホタテガイ)の生産性が向上していたことを発見した。
- 本研究は、海水の物理・化学成分からプランクトンを経て水産養殖種に至るまでの、複雑系である生態系が大規模な自然変動に影響を受けていたことの包括的な解明に成功した。