2023年1月18日
ポイント
●逸話的だった魚類のあくびを世界で初めて定量的に研究し、状態変化仮説を実証。
●水底で休むイワナの稚魚が遊泳開始の直前にあくびする傾向を発見。
●魚類だけでなく、動物界におけるあくびの起源の理解への貢献に期待。
概要
北海道大学大学院水産科学院博士後期課程3年の山田寛之氏と同大学院水産科学研究院の和田 哲教授は、北海道に生息するイワナの稚魚が頻繁にあくびをすることを発見し、稚魚のあくびが、着底行動から遊泳行動への行動変化が起こる直前に集中していることを明らかにしました。
霊長類をはじめとする内温動物では、あくびが行動変化に先立ち起こることが従来から知られていますが、外温動物である魚類では、これまで逸話的な観察記録しかなく知見に乏しい状態でした。本研究成果は、あくびの状態変化仮説を魚類で実証した世界初の研究です。
内温動物における状態変化仮説の研究では、あくびの血流促進効果や脳の冷却機能などに起因して生じる生理的覚醒度の高まりが、非活発な行動から活発な行動への状態変化を引き起こすと考えられています。本研究の結果は、外温動物である魚類のあくびにも、内温動物のあくびと類似した機能がある可能性を示唆しています。
魚類は、地球上で最初にあくびをした動物と考えられています。本研究の成果は、魚類のあくびへの理解だけでなく、動物界におけるあくびの起源の理解にも重要な貢献を果たすことが期待されます。
なお、本研究成果は、2023年1月10日(火)公開のJournal of Ethology誌にオンライン掲載されました。
論文名:Fish yawn: the state-change hypothesis in juvenile white-spotted char Salvelinus leucomaenis(魚のあくび:イワナSalvelinus leucomaenisの稚魚における状態変化仮説の検証)
URL:https://doi.org/10.1007/s10164-023-00777-2
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