海洋堆積物でヨウ化エチルがメジャー成分に躍り出る~世界初、海洋堆積物中における有機ガス成分の時系列観測を実施~
ポイント
●世界で初めて、海洋堆積物中の有機ガス成分の時系列観測を実施。
●海や大気ではマイナー成分のヨウ化エチルが、海洋堆積物では一気にメジャー成分に台頭。
●海底面の海中動画、観測風景の動画をオンライン教材コンテンツLASBOS YouTubeにて配信。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院の大木淳之准教授らの研究グループは、北海道噴火湾と北部ベーリング海で有機ヨウ素ガス種の時空間的な分布を調査しました。その結果、噴火湾では植物プランクトンの大増殖が起こる春以降、海洋堆積物の表面で有機ヨウ素ガスの一種ヨウ化エチル(C2H5I)の濃度が増えることがわかりました。また北部ベーリング海やチャクチ海南部の陸棚域でも堆積物表面でこれらが高濃度で観測されました。以上から、海や大気では常にマイナー成分のヨウ化エチルが、海洋堆積物では一気にメジャー成分に躍り出ることがわかりました。これは海洋表層で生産された植物プランクトンが海底面に沈殿してから、植物細胞が死滅するときにヨウ化エチルが発生すると考えられました。
本研究の成果により、物質循環の挙動が複雑で謎の多い海のヨウ素循環の解明に一歩近づくことが期待されます。
なお、本研究成果は、2022年8月12日(金)公開のCommunications Earth & Environmentにオンライン掲載されました。また本論文では補足情報として、観測場所の海底面の動画や観測風景の動画が提供されています。あわせて水産科学研究院のオンライン教材コンテンツLASBOS YouTubeからも本研究に関連する動画を配信しています。
論文名:Marine sediment as a likely source of methyl and ethyl iodides in subpolar and polar seas(北極海と亜寒帯域の海洋堆積物から発生するヨウ化メチルとヨウ化エチル)
URL:https://doi.org/10.1038/s43247-022-00513-7
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(左)北部ベーリング海陸棚の海底面、(右)北海道噴火湾の海底面
◇大木 淳之准教授(写真をクリックすると教員紹介ページへ)