キャンパス・コンソーシアム函館が主催する合同研究発表会「HAKODATEアカデミックリンク2021」(https://www.cc-hakodate.jp/academiclink-web/)がオンラインにて開催されました(会期:11月26日~12日19日)。
本発表会は、函館市内の高等教育機関で学生らがどのようなことを学び、研究しているのかを広く市民の皆様に知って頂く事を目的とし、特に函館の高校生に内容を知ってもらいたいという趣旨で行われています。
ブースセッションにおいて57チーム、ステージセッションにおいて8チームが参加し、北海道大学水産学部から3チームが受賞となりました。おめでとうございます!
◇大賞(ブースセッション)
テーマ:海藻のヌメヌメ成分「フコイダン」の最大Maxパワー力を生かすために
チーム名:ヌメヌメんBrothers
学部4年 松井亘・伊藤大翔
所属:海洋応用生命科学部門 水産資源開発工学分野
指導教員:岸村 栄毅 教授、熊谷 祐也 助教
研究内容:私たちが食材として利用するコンブやワカメ、函館特産のガゴメ昆布などの海藻は粘性(ヌメヌメ)を有しています。そのヌメヌメ成分は「フコイダン」という食物繊維に由来しています。フコイダンは、フコース(単糖)を構成糖とし、それに硫酸基が結合している硫酸化多糖です。驚くべきことに、フコイダンには抗腫瘍効果、コレステロールや血圧低下作用、抗ウイルス作用、抗アレルギー作用などの様々な健康機能性があります。近年の研究では、低分子のフコイダン(フコイダンオリゴ糖)の方がより高い健康機能性を示すことが明らかになってきました。
現在私たちは、「酵素」を用いてフコイダンからフコイダンオリゴ糖を生成する方法を研究しています。本発表では、フコイダンの特徴やフコイダンオリゴ糖の生成方法について紹介しました。皆さんにヌメヌメの持つパワーを知ってもらいたいので、ぜひご覧になってください。
◇優秀賞(ブースセッション)
テーマ:ニジマスにおける生理学的な成長指標の評価
チーム名:ますますにじます
修士1年 井筒彩歌
所属:海洋応用生命科学部門 海洋生物科学科 水産資源開発工学講座
指導教員:清水宗敬 教授
研究内容:ニジマスは重要な養殖対象種ですが、養殖過程での成長停滞や成長不良が問題となっており、成長のモニタリングや飼育条件の最適化が重要とされています。魚類の成長はインスリン様成長因子(IGF-I)とIGF結合蛋白(IGFBP)により調節されています。IGFBPはサケ科魚類において3種類(1a、1b及び2b)知られており、IGF-Iと共に成長指標として期待されています。本研究では血中IGF-I及びIGFBPが成長率と相関を持つかを調べることにより、これらのニジマスの成長指標としての有用性を検証しました。血中IGF-I及びIGFBPの測定の結果、IGF-Iは成長率と相関を持ち指標としての有用性が確認され、IGFBP-1aと1bはほとんど検出されませんでした。一方で、IGFBP-2bは安定して検出され、成長率と相関を持ったため、IGF-IとIGFBP-2bがニジマスの養殖において有用であることが明らかになりました。
◇優秀賞(ステージセッション)
テーマ:季節変動から紐解くダルス「MAAs」産業利用への試み
チーム名:やまちゃん&まえちゃん
学部4年 山本竜矢・前田侑也
所属:海洋応用生命科学部門 水産資源開発工学分野
指導教員:岸村 栄毅 教授、熊谷 祐也 助教
研究内容:UVカットの日焼け止めは化学合成品が含まれるため、環境への影響が懸念されています。一方、潮間帯に生育する海藻は強い紫外線に晒されていますが、マイコスポリン様アミノ酸(MAAs)を作ることで紫外線から身を守っています。
そのため、海藻由来の天然の紫外線防御物質であるMAAsの産業利用が考えられますが、MAAsは紫外線を防ぐ能力が強いため海藻には少量しか含まれていません。私たちは以下の仮説「海藻が紫外線から身を守るならば、紫外線量に応じてMAAsの量が増えるのではないか」を立て、紅藻ダルスに含まれるMAAs量について季節別に検討しました。月ごとにダルスを採取してMAAs量と紫外線量を比較しましたが、ある時期から相関関係が見られなくなりました。本発表では、ダルスのMAAs含有量、ダルスの他の成分、そして環境要因を基に、季節変動から謎を紐解き、海藻に含まれるMAAsの活用法について紹介しました。