建造の経緯
北海道大学水産学部附属練習船うしお丸は、昭和46年に建造された初代以来、主として北海道南部周辺・津軽海峡・陸奥湾等の海域で、周年海洋に関する物理、化学、生物、及び漁業に関する漁船、漁具漁法、生物資源の生理・生態・魚場学等の実験・実習・調査・研究のための研究調査船として活躍してきました。平成4年に建造されたうしお丸(第二代)は、平成14年に船体延長工事及び、船内設備の拡充、調査観測機器の拡充を図り、研究調査船として数々の業績を果たしてきました。
しかし建造から30年が経過し、船体、機関、各種航海計器及び調査機器の老朽化により、航海や教育研究に支障が生じてきたため、本船はその代船として建造されました。
北海道大学水産学部では、平成13年に海技免状を取得するための特設専攻科を廃止して大学院重点化を加速させ、旧来の「漁業」のための科学としての水産学から水圏の持続可能性を高める「水産科学」に取り組む研究拠点へと転換し、学際性をいっそう推進してきました。
新うしお丸は、人類の共通財産である海洋において、海洋生態系の持続可能性を希求する「水産科学」と、その関連分野を包括的に教育・研究する実践的なプラットフォームとして、高い安全性の確保、耐候性確保や船体動揺軽減及び30年以上大規模修正が不要な最新の船体形状・構造、陸上生活と同等で、女性乗船者にも配慮した居住空間、運行時の低燃費化による環境負荷低減、高度な海洋調査を行うための最新の調査機器を装備し、さらに多数の大学・研究機関との交流・共同研究や傭船調査事業などの研究拠点としての活動を続けて参ります。
うしお丸の目的
うしお丸は、水産学部生及び水産科学院・環境科学院の大学院生の高度な調査技術の習得等を対象として次の漁業実習・海洋観測・調査研究に対応した国際航海にも従事可能な練習船です。- 漁業実習
・トロール漁業
・延縄漁業
・表中層刺網漁業
・イカ釣り漁業
- 海洋観測・調査研究
・CTDによる海洋観測
・各種漁具の漁獲特性調査
・漁業資源の定量的調査
・各種音響機器による生物資源調査・海底調査
・ドローンによる沿岸リモートセンシング
・マイクロネクトン採集
・マイクロプラスティック・海底ゴミ調査・採泥など
また、各種精密音響機器の観測機能を阻害しないよう、船体から生じる騒音、振動、気泡を低減するために音響機器送受波器を船底のソナードームに配置するなど、適正な防音、防振、防泡対策を講じています。
具体的には、船速10ノットでの水中放射雑音レベルをICESの推奨基準値以下にすることを目標に、船型の開発・模型試験を行い、得られたデータから船体板厚の増加、振動・騒音源となる機器への防振対策、機関室等の区画に対する制振材の施工を実施し、船底に装備する精密音響機器の取得データへの影響低減・精度向上を図っています。
うしお丸で行われる実習等
1. 実験・実習の範囲
物理海洋学、化学海洋学、海洋生物学、海洋生態学、資源生物学、漁業資源計測学、行動資源計測学、水産資源開発工学水産学部での授業科目
「海洋生物科学科沿岸実習」
「沿岸実習」
※上記の他、水産学部「卒業研究」や水産科学院「特別研究」(修士論文・博士論文作成)のために乗船しています。
2. 漁業の種類
船尾トロール漁業、延縄漁業、刺し網漁業、一本釣り漁業、イカ釣り漁業等3. 主要な調査研究の対象
1.海洋に関する物理学、化学、生物学、生物生産学2.海況および漁況変動、生物資源の変動、漁場管理学
3.漁具と漁法、漁具設計に関する応用物理学
4.魚類、頭足類、海鳥、ほ乳類の生態学、プランクトンベントスの生態学
5.漁業機械に関する能率および安全工学
6.漁業測器に関する水中音響工学、資源計測学
7.水産生物由来の未知成分の探索
うしお丸に乗船を希望する方へ
本学の教員・学生の他、学外の研究者等の方もうしお丸を利用できます。詳細につきましては、余席共同利用をご覧ください。
主要目
全 長 | 45.62m |
登録長 | 39.06m |
長さ(垂線間) | 38.70m |
幅 (型) | 8.20m |
深さ(型) | 3.40m |
計画満載吃水(型) | 2.85m |
総トン数 | 262トン |
国際総トン数 | 409トン |
速力(試運転最大) | 14.48 ノット |
速力(航海) | 約11.00 ノット |
主機関 | ヤンマー 6EY22AW |
定格出力 | 1330 kW / 900 min-1 |
最大搭載人員 (乗組員16名、教員・学生17名) |
33名 |
行程
起工年月日 | 令和 3年12月22日 |
進水年月日 | 令和 4年 3月19日 |
竣工年月日 | 令和 4年10月31日 |
建造所
新潟造船株式会社