吉水 守特任教授が平成23年度日本水産学会賞を受賞

吉水 守氏は,「魚類ウイルス病とその防疫・防除に関する研究」に関する一連の研究が評価され,平成23年度日本水産学会賞を受賞されました。

同氏は,これまで一貫して水圏微生物,特に魚類ウイルスと水棲細菌の研究に取り組み,1971年にわが国で初めて発生したサケ科魚類の伝染性造血器壊死症の防除・防疫対策の研究を始め,その後の疫学調査で見つかった魚類で最初の発癌性を有するヘルペスウイルス;Oncorhynchus masou virus ,サケのレオウイルス;chum salmon virus,旋回病原因レトロウイルスおよび海産魚,特にヒラメに大きな被害を与えたヒラメラブドウイルスなど,魚類病原ウイルスの病原性や感染機構,宿主の感染防御機構等の基礎的研究を行いました。同時に,増養殖現場の実態に即した飼育用水および排水の殺菌法,病気の早期診断法,病原体の蔓延防止法に関する研究を行い,これらの成果を孵化場および種苗生産施設での防疫対策としてとりまとめ,①採卵用親魚の健康調査を実施し,群としての感染症発症リスクを把握する。②採卵受精時に卵を洗浄し,ヨード剤で消毒する。③飼育池と隔離した孵化場で卵を管理し,発眼期に再度消毒する。④孵化・飼育用水は湧水か紫外線照射した河川水を使用する。⑤放流魚を除き,病原体に対する抵抗性がついてから養魚池に移す。といった対策を提案・実行し,孵化場および種苗生産施設における大量死防止に大きく貢献しました。さらに,上記の手法で作成された病原体フリー魚は,魚類の感染症や水産増殖,育種,魚類生理等に関する研究の進展を支えることとなりました。魚類の腸内細菌叢に関す研究成果は抗ウイルス活性を有する細菌が水中に広く分布することを見いだし,抗ウイルス活性を有する腸内細菌をプロバイオティクスとしたウイルス病の予防に発展させました。
上述の対策は世界的に広く用いられ,仔稚魚期の病気は激減しました。しかし,天然水域,特に養魚池あるいは海面の養殖場に病原体が存在する場合は,種苗への感染が危惧される状況にあります。そこで同氏は試作ワクチンとして不活化ワクチン,組換えタンパク質ワクチン,弱毒生ワクチン,インターフェロン誘導剤併用生ワクチン等の作製あるいは耐病性系統の作出を図りました。さらにワクチン効果を判定するための抗体検出ELISAを確立し,ワクチン接種のための自動注射器を開発しました。
これら魚類ウイルス病とその防除・防除に関する業績は,国際誌に数多く掲載され,また多くの著書として取りまとめられています。さらに,北海道大学大学院水産科学研究院の教授として,後進の育成にも励むとともに,都道府県の研究者との共同研究も精力的に行ってきました。同氏の目は常に現場に向けられ,増養殖事業の発展の妨げとなるウイルス病に対し並々ならぬ熱意で研究に励む姿勢は称賛に値します。
このように,吉水 守氏の研究は,水産増養殖における重要な課題であったウイルス病の防疫体制の確立に大きく貢献しました。研究蓄積が非常に希薄であったわが国の魚介類のウイルス研究の分野を精力的に切り開いた人物であり,水産学への貢献は極めて大きいものです。 (文責 笠井久会)